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属人化問題(後編)


総合カタログの現場から、属人化を完全になくすことはできない。これはもう、前提として受け入れたほうがいい。

500ページを超える情報量、複雑な制作工程、長年積み重ねられた製品知識。これらを誰でも即座に引き継げる形に落とし込むのは、現実的ではない。むしろ「属人化をなくそう」とするほど、現場は疲弊していく。

では、打つ手はないのか。答えは「属人化させたまま、壊れにくくする」ことだと思っている。

ひとつ目は、役割を一人に背負わせないこと。キーマンを「一人のスーパーマン」にせず、「複数人で共有するポジション」として設計する。たとえば、全体を見る営業と、制作側で伴走する編集的ポジション。この二人が常にセットで動く体制をつくるだけでも、リスクは大きく下がる。

ふたつ目は、「判断」を言語化して残すことだ。なぜこの仕様になったのか。なぜこの順番なのか。なぜ今回は見送ったのか。完成したカタログではなく、そこに至るまでの判断プロセスこそが、次の世代にとっての財産になる。完璧なマニュアルである必要はない。箇条書きのメモで十分だ。

みっつ目は、「若手に任せる」のではなく、「若手を巻き込む」こと。いきなり全体を任せれば、誰だって逃げ出したくなる。そうではなく、最初は会議に同席させる、打ち合わせの議事録を取らせる、判断の理由をその場で説明する。時間はかかるが、これしかない。

そしてもうひとつ、大事なことがある。それは、「この仕事は地味だが、価値がある」と言語化することだ。

総合カタログの統括は、確かに派手ではない。しかし、会社の製品情報を整理し、顧客との関係を維持し、毎年同じ品質で世に出し続ける仕事は、立派な専門職である。「クリエイティブではない」のではなく、「クリエイティブが成立する土台をつくる仕事」なのだ。

紙媒体は減っていくかもしれない。それでも、総合カタログが担っている「情報の背骨」の役割が消えることはない。形が変わるだけだ。

だからこそ、問うべきなのは「やめるか、続けるか」ではない。「どうやって続けられる形にするか」なのだ。

総合カタログは、まだ終わっていない。ただ、やり方を更新しない限り、同じ場所で立ち尽くすだけである。

 
 
 

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