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カタログ制作の掟(おきて)


デザイナーは職人なのか
デザイナーという仕事は、果たして「職人」と呼べるのだろうか。この問いを、私は時々考える。 そもそも職人という言葉から思い浮かぶのは、たとえば金属加工工場で旋盤に向かう職人の姿だ。「1000分の何ミリという精度で削り出す」「最後は機械ではなく、人間の手の感覚がものをいう」そんな世界である。 このイメージをそのままデザイナーに当てはめると、少し違和感がある。デザイナーは、1000分の何ミリという精度を日々追いかけているわけではない。また、コンピュータという機械よりも手先が優れている、という話でもない。 では、寿司職人はどうだろう。素材を見る目、魚の捌き方、シャリの加減、握りの力。そこには明らかに、長年の経験と感覚が必要とされる。そう考えると、デザイナーは旋盤工よりも、寿司職人に近いのかもしれない。 確かに、デザイナーにも似たような感覚の世界がある。余白の取り方、文字の組み方、罫線の引き方、フォントの選び方。ほんの少しの違いで、紙面の印象は大きく変わる。その判断には、やはり経験がものをいう。 ただ、それでも「デザイナー=職人」と言い切るには、どこかしっ
narutaka yamada
6月28日読了時間: 2分


カタログ制作の舞台裏と、「見えない仕事」の話
カタログをつくる―。 一見すると、レイアウトの枠に商品を当て込んでいくだけの作業に見えるかもしれません。 しかし実際の現場では、その何倍もの工程が静かに、着実に積み上げられています。今回は、制作側の作業工程を分解しながら、あまり語られることのない「ディレクション」という仕事について考えてみたいと思います。 まずは準備段階から 制作は、いきなりページを組み始めるわけではありません。 全体のスケジュールを設計する 誌面フォーマットを固める フォーマットにルールを与える そのルールに基づいた組版システムを整備する 模擬テストを行い、不測の事態に備える ここまでやって、ようやく“スタートライン”です。 この段階でどれだけ精度を高められるかが、後工程のスピードと品質を左右します。 実制作は「整理」から始まる 実際の誌面制作に入ると、まず行うのは「入稿原稿の整理」です。 次工程の作業者がスムーズに動けるように、 テキストデータの確認 画像データのチェック レイアウト指示の整理 注意事項の明文化 ページごとのフォルダ分け こうした準備を徹底します。...
narutaka yamada
2月14日読了時間: 3分


属人化問題(後編)
総合カタログの現場から、属人化を完全になくすことはできない。これはもう、前提として受け入れたほうがいい。 500ページを超える情報量、複雑な制作工程、長年積み重ねられた製品知識。これらを誰でも即座に引き継げる形に落とし込むのは、現実的ではない。むしろ「属人化をなくそう」とするほど、現場は疲弊していく。 では、打つ手はないのか。答えは「属人化させたまま、壊れにくくする」ことだと思っている。 ひとつ目は、役割を一人に背負わせないこと。キーマンを「一人のスーパーマン」にせず、「複数人で共有するポジション」として設計する。たとえば、全体を見る営業と、制作側で伴走する編集的ポジション。この二人が常にセットで動く体制をつくるだけでも、リスクは大きく下がる。 ふたつ目は、「判断」を言語化して残すことだ。なぜこの仕様になったのか。なぜこの順番なのか。なぜ今回は見送ったのか。完成したカタログではなく、そこに至るまでの判断プロセスこそが、次の世代にとっての財産になる。完璧なマニュアルである必要はない。箇条書きのメモで十分だ。 みっつ目は、「若手に任せる」のではなく、
narutaka yamada
2月4日読了時間: 2分


属人化問題
500ページを超える総合カタログを発刊するとき、制作側のキーマンは誰になるのだろうか。編集長か、アートディレクターか、それともDTPの責任者か。 結論から言ってしまえば、多くの現場でその役割を担っているのは「担当営業」である。 もしこのポジションを、たとえばデザイナーが全体統括者として担ったらどうなるか。当然ながら、意識はデザイン工程に寄りやすくなる。すると、知らず知らずのうちに、顧客の要望とのズレが生じてくる。DTPの責任者が同じ役割を担った場合も事情は似ている。業務領域に視点が寄り、結果として全体のバランスを欠きがちになる。 総合カタログは、とにかく全体を見る仕事だ。工程、予算、スケジュール、品質、そして顧客の感情。これらを同時に俯瞰できる立場でなければ、うまく回らない。そう考えると、やはり営業が適役だという結論に行き着く。 もっとも、この役割は決して楽ではない。コミュニケーション力はもちろん、部署間の調整、顧客対応、時にはクレーム対応まで求められる。判断は常に即断即決。迷っている暇はない。電光石火のように決断を重ねていく、相当タフな精神力が
narutaka yamada
2月4日読了時間: 2分


撮影あるある(デザイナー編)
立ち位置・存在感あるある 基本、椅子がない → 立ちっぱなし or 箱に腰掛け。 「何か言わなきゃ…」と「黙っていた方がいい」の狭間 → デザイナー脳がフル回転。 空気を読んでるつもりで、誰よりも疲れる → 発言タイミング難易度SS。 👀 見え方・誌面脳あるある 誌面トリミングが脳内で始まる → 「ここ切れる」「天地余る」。 余白の心配をしているのは大抵デザイナーだけ → カメラマン「あとで切れるでしょ」。 “寄り”か“引き”で一人だけ悩んでいる → カタログあるある。 「この角度、隣ページと喧嘩しないかな…」 → 撮影時点で見開きを想像。 📏 仕様・ルールあるある フォーマットの呪縛 → 「このシリーズ、全部この向きじゃないと死ぬ」。 “過去号踏襲”が最大の判断基準 → 新規性より統一感。 1点だけ例外を作るかで一生悩む → 例外は後で必ず後悔。 🗣 発言系あるある(これ地獄) 「あと1カットだけ…」が一番言いづらい → 空気が一瞬凍る。 言うか言わないか悩んだカットが、後で必ず問題になる → あの時言えばよかった案件。...
narutaka yamada
1月28日読了時間: 2分


痛し痒しの英語表記
英語表記のジレンマ 「外国人が見るかもしれないから」——この一言を免罪符に、商品名の横や上下へ英語表記を添えるカタログは少なくありません。けれど正直に言えば、それは配慮というより“いちびり”に近い行為ではないでしょうか。 本当に外国人が読む前提であれば、英語で表記すべきなのは商品名だけではありません。説明文も、仕様も、注意書きも、すべて英語で統一されていなければ筋が通らない。にもかかわらず、実際に行われているのは、日本語本文の横に英語の単語をちょこんと添えるだけ。もはや英語は情報ではなく、飾り罫と同じく「デザインの部品」に成り下がっています。 考えてみれば不思議な話です。なぜ日本人は、そこまでして英語を入れたがるのでしょうか。しかもこの“飾り英語”、実務的には厄介者です。デザイナーは校正係の仕事を確実に増やし、チェック漏れがあれば即・誤植という地雷を踏む。意味を成さない装飾であるにもかかわらず、リスクだけは一人前。百害あって一利なし——そう断じたくなる気持ちも、よく分かります。 ……と、ここまで言っておきながら、完全には切り捨てきれないのも事実で
narutaka yamada
1月28日読了時間: 2分


カセットの掟
オレンジブックに学ぶ配置力 カセット――あるいはグリッドと呼ばれるその枠組みは、どこか幕の内弁当を思わせます。限られた箱の中に、色とりどりのおかずが無駄なく、しかも美味しそうに詰め込まれている、あの完成度の高い佇まいです。 では、日本一有名な商社系カタログ「オレンジブック」の誌面を、一コマだけ切り取って眺めてみましょう。左上から、仕入れ先名とロゴ、国名と国旗、商品名(英名・和名)、ピクトグラム、各種アピールマーク、商品画像、画像下の品番、特長コピー、仕様コピー、材質、製造国、単価、サイズ別表、発注単位、スペック表、問い合わせ先の電話番号……。こうして列挙してみると、よくぞここまでと思うほどの情報量です。 しかし不思議なことに、誌面は決して窮屈に見えません。むしろ「食べやすそう」ですらある。これは、カセット内での配置を緻密に計算し尽くしたうえで、レイアウトに落とし込んでいるからにほかなりません。ユーザーが「買う」ために本当に必要な情報を取捨選択し、狭いスペースの中にギリギリのバランスで配置する。その設計力には、思わず唸らされます。...
narutaka yamada
1月28日読了時間: 2分


色の掟
カタログ誌面における色の作法 カタログ誌面では、つい色を使いたくなります。しかし、多色展開は基本的に避けたいところです。 なぜなら、誌面で真っ先に目に飛び込んできてほしい主役は、あくまで「写真」だからです。色数が増えるほど、写真の鮮度は少しずつ奪われていきます。意図せず、情報のノイズを増やしてしまうのです。 ここで、ひとつ例え話を。お刺身盛り合わせのお刺身の下に敷かれているのが、大根のつまではなく、マーブルチョコレート柄のシートだったらどうでしょう。おそらく多くの人が、食欲よりも違和感を先に覚えるはずです。主役を引き立てるはずの脇役が、前に出すぎてしまった状態です。 筆者が理想と考える紙面の色構成は、とてもシンプルです。スミ文字に、カテゴリー色をひとさじ。この2色で十分だと思っています。しかも、そのカテゴリー色は、ほんの差し色程度で構いません。 ところが実際には、カテゴリーを強調したいあまり、ベタ面を重ね、結果として誌面が重たくなってしまうケースをよく見かけます。意図は理解できるだけに、少し残念に感じてしまいます。 写真が映える誌面とは、白い紙の
narutaka yamada
1月28日読了時間: 2分


白場の掟
白場が語る、デザイナーの技量 デザイナーの技量は、意外なところに表れます。そのひとつが、誌面における「白場の取り方」です。白場のバランスは数値で割り切れるものではなく、どこか感覚的な領域に属しているように思います。 編集マニュアルに沿って、指定されたサイズ通りに組版しているはずなのに、「なぜか落ち着かない」「どこか引っかかる」。そんな経験は、多くのデザイナーが一度は味わっているのではないでしょうか。このとき、その違和感に気づけるかどうかが、ひとつの分かれ道になります。 違和感を覚えながらも、「ルール通りだから」とそのまま流してしまう。一方で、立ち止まり、首をかしげ、「この白は本当にこれでいいのか」と考え直す。その小さな迷いこそが、デザインの質を押し上げてくれます。筆者は、この違和感を感じ取る感性を、とても大切にしています。 さらに経験を積んだデザイナーになると、こちらの想像を超える大胆な白場を提示してくることがあります。初見では驚かされながらも、しばらく眺めているうちに「なるほど」と腑に落ちる。そんな誌面に出会うと、思わず唸ってしまいます。...
narutaka yamada
1月28日読了時間: 2分
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