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発注者の「癖」をつかむ

8月12日
読了時間: 3分

初めてのクライアントからデザインの依頼を受けたとき、私がまず意識することがある。

それは、発注者の「癖」をできるだけ早くつかむことだ。

デザインの進め方や指示の出し方といった、いわゆる仕事上のルールを知ることももちろん大切だ。しかし、それ以上に見ておきたいのが、その人自身の「タイプ」である。

理屈を積み上げて判断する人なのか、感覚を大切にする人なのか。慎重派なのか、即断即決型なのか。見た目の美しさを重視するのか、それとも情報の正確さや論理性を優先するのか。

初回の打ち合わせで話をしていると、なんとなくその傾向が見えてくる。

長くこの仕事をしていると、「この人は、たぶんこういうところを気にするだろうな」という予測も、少しずつ当たるようになってくる。もちろん人間を簡単に分類できるわけではないが、最初の方向性を探るうえでは、こうした感覚が意外と役に立つ。

問題は、デザインの方向性が固まり、いよいよ細部を詰める段階に入ってからだ。

ここで、それぞれの発注者の「癖」が本格的に顔を出す。

代表的なのが、

「なんか違うんだよなあ」

というひと言。

デザイナーにとって、なかなか手強い言葉である。

どこが違うのか。色なのか、写真なのか、レイアウトなのか。そもそも目指しているゴールが違うのか。

具体的な理由が分からないままでは、こちらも手探りで案を増やすしかない。A案、B案、C案……と作っているうちに、時間もコストもどんどん膨らんでいく。

逆のタイプもいる。

レイアウトや文字の置き方まで細かく指示し、「とにかく、この通りにしてください」という人だ。

こちらが「こうした方が、より伝わりやすくなりますよ」と提案しても、なかなか聞き入れてもらえない。

こうなると少々つらい。

デザイナーは単に指示されたものを形にするだけではなく、目的に対してより良い方法を考えることも仕事だからだ。そこに提案の余地がなくなってしまうと、どうしても仕事の面白さは薄れてしまう。

さらに、改行位置を一文字単位で気にする人、文字間のわずかな空きを見逃さない人、一つのミスも許さない人……。

発注者の「癖」を挙げ始めれば、きりがない。

もちろん、仕事が非常に進めやすいタイプの人もいる。

「これはいい」「これはダメ」

と、判断が明快な人だ。

さらに、

「なぜダメなのか」

まできちんと説明してくれる人なら、なおありがたい。

理由が分かれば、次の提案に反映できる。デザイナーにとって、修正指示そのものよりも、その背景にある「判断基準」が分かることの方がずっと重要なのだ。

結局のところ、商業デザインは、デザイナーだけで完成させるものではない。

発注者とデザイナーが一緒につくり上げていく、共同作業である。

だからこそ、お互いの考え方や仕事の「癖」を理解できているほど、やり取りはスムーズになり、完成度も上がっていく。

そう考えると、発注者の癖ばかりを観察している場合でもない。

クライアントから見れば、当然こちらにも「デザイナーの癖」がある。

説明が長すぎないか。自分の案に固執していないか。相手の意図を勝手に決めつけていないか。プロだからという理由で、押しつけがましくなっていないか。

発注者の癖を見抜こうとしているうちに、逆に自分自身の癖も見えてくる。

そんなことを時々考えながら、今日もデザインに向き合っている。


 
 
 

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