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野球とデザイン

8月12日
読了時間: 3分

野球が好きだ。

投げる。打つ。走る。捕る。

やっていることだけを並べれば、とてもシンプルなスポーツに見える。ところが実際は、一球ごとに状況が変わり、そのたびに戦術も変わる。カウント、走者、アウトの数、相手打者、投手の調子。さまざまな条件を読みながら、次の一手を考えなければならない。

実に頭を使うゲームだ。

そして野球を見ていると、試合の途中で必ずといっていいほど「ここが勝負どころだ」という瞬間がやってくる。

一本のヒット。一つの四球。相手の小さなミス。

その一つをきっかけに、それまで動かなかった試合が突然動き始めることがある。

いわゆる「流れが変わる」というやつだ。

デザインの仕事をしていると、この感覚によく似た場面に出くわす。

クライアントの要望を聞き、素材を集め、レイアウトを考える。

ところが、どうにもまとまらない。

写真を動かしてもダメ。文字を大きくしてもダメ。色を変えてもダメ。

考えれば考えるほど、どんどん深みにはまっていく。

野球で言えば、三者凡退が何イニングも続いているような状態だ。

ヒットが出ない。点が入る気配もない。

こうなると、だんだん焦ってくる。

そんなとき野球なら、まずは何でもいいから塁に出たい。

ヒットでなくてもいい。フォアボールでもいい。デッドボールでもいい。振り逃げだって立派な出塁だ。

とにかく一人、ランナーを出す。

すると、そこから何かが起こるかもしれない。

デザインも同じだと思っている。

アイデアが出ないときは、とにかく手を動かす。

写真を置いてみる。文字を大きくしてみる。思い切って余白をつくってみる。普段ならやらないレイアウトを試してみる。

最初からホームランを狙う必要はない。

とりあえず「塁に出る」ことを考える。

すると、闇雲に動かしていたはずのレイアウトの中から、

「あれ、ここはいいかもしれない」

という小さな突破口が見えてくることがある。

その小さな発見が、意外なほど大きい。

そこから写真の位置が決まり、タイトルの大きさが決まり、文字組みが決まり、全体の構成まで一気につながっていく。

さっきまで止まっていた頭と手が、突然勝手に動き始める。

デザインにも確かに「流れ」がある。

ただし、チャンスが生まれたからといって、必ずものにできるとは限らない。

せっかく良いアイデアが見つかっても、詰め切れずに終わってしまうこともある。

野球なら、ノーアウト満塁から一点も取れないようなものだ。

だからこそ大切なのは、まず小さなチャンスをつくる力。

そして、そのチャンスを確実に形にする技術なのだと思う。

野球もデザインも、偶然だけではなかなか勝てない。

ここぞという場面で一本を出すためには、普段からバットを振っておかなければならない。

デザインも同じだ。

見る。考える。つくる。試す。

その繰り返しが、いざというときの一本につながる。

次の仕事で、いい場面が回ってきたときに打てるように。

今日も素振りを続けておこうと思う。

 
 
 

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